2021 07.15
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京都のストーリーを集めるホテル、オープンへ
京都のストーリーを集める新しいホテルが、2021年6月にオープンしました。
サンフロンティアホテルマネジメント株式会社とマリオット・インターナショナルの協業で京都に開業した、
「HIYORI チャプター京都トリビュートポートフォリオホテル」。
KA&Aでは、1階共用部のエントランス、レセプション、レストラン・バー・チャプターファクトリーの内装設計を担当しました。オープンにあたり、宿泊を体験してきましたのでリポート致します。
「重ね」をデザインに
1F フロント、レストランエリアでは、「重ね」というコンセプトを空間デザインに落とし込みました。
和服や食器などに見られる日本の重ねの文化は、平安時代に完成したといわれています。歴史ある文化をモダンな要素と組み合わせることで、「現代の重ね文化」としての再構築を試みました。
一歩足を踏み入れると、石や木、鉄、箔、左官、アー トなど、幾重にも重なる壁や光の空間要素に包まれます。
「ようこそ、京都という物語へ」
「地域とつながることを大切にしたい。生活の中に当たり前になりすぎている文化を、住民と共に再発見できる、地域の人とともに場所を盛り上げることができるホテルを目指したい」という思いでつくられた「旅を重ねる拠点」となるホテル。
大きな特徴は「CHAPTER FACTORY」という、新しい京都の旅を提案する空間が用意されています。
そこには、一筆箋に書かれた京都の旅にまつわるストーリーが約50種類用意されており、それを基に、旅のコンシェルジュが旅人に寄り添ったプランを提案してもらえます。
もしくは、訪れた旅人は、そこで見つけたお気に入りの一筆箋を携えて旅に出る。
編集者やライター、地元の達人などによって書かれたそれぞれのとっておきの小さな旅は、ガイドブックにも載っていない、“知る人ぞ知る京都の顔” 旅人は、旅の終わりに自分でも一筆箋を書き残すことができ、そうすることによって、自分の旅が次に誰かの旅に循環されます。
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引き出しからお気に入りの一筆箋を取り出して
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活版でオリジナルのカバーを作ることができます。
空間のコンセプトの「重ね」と「旅を重ねてもらいたい」という願いがつながる場所となっています。
「CHAPTER FACTORY」の奥に進むと、レストランラウンジとバーへ続きます。
パティスリー「松也-MATSUNARI-」では、洋と和を重ね合わせたメニューが楽しめます。
パティシエのJACK氏によって生まれたオリジナルの味。
カカオの入ったあんぱんや、とろけるチョコレートのわらび餅など、こだわりの詰まったスイーツが用意され、京都のお土産としてお持ち帰りでるものも用意されています。
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左奥の照明は、デザイナー インゴ・マウラーによるメモをシェードに見立てた作品。円形のアートは、アーティスト松下徹氏による作品。
バーでは、京都の地にちなんだこだわりのお酒が愉しめます。
若手アーティストによるアートを館内に配置し、空間に彩りを加えました。
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アーティスト橋本知成氏の作品。陶磁器に、酸化金属と釉薬を施し、
独特な光彩を放つ -
アーティスト品川亮氏の作品。金箔の上に墨と岩絵具で描いた絵画
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そして、和の空間を構成する素材の色が空間の彩りとして重なります。
一筆箋を携えて、京都の物語の中へ
ホテルのある場所は、京都御所からも程近く、鴨川にも歩いて出られます。
「CHAPTER FACTORY」で選んだ一筆箋を携えて、京都の街歩きにでました。
残念ながらコロナ禍で営業短縮をしていたのですが、路地に入ったことで京都の風情を感じることができました。
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突き当たりのお堂に足を踏み入れると、
今、咲いたばかりのように美しく開く蓮の花。お寺の先を歩くと、老舗の「一保堂茶舗」の本店がありました。
茶壷の並ぶ昔ながらの店内で新茶を頂き、再び街へ出て鴨川へ。
観光名所をまわるだけではない、日常の風景を探す旅。
身近な場所に新しい発見がある京都の路地裏。京都の物語の中に入る旅を「重ねる」拠点となれば幸いです。