2023 10.18
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クリーニング工場兼オフィス「sinso」がグッドデザイン賞を受賞しました
山梨県のクリーニング工場兼オフィスのリノベーションプロジェクトが2023グッドデザイン賞を受賞しました。築40年の自動車精密工場だった場所をリノベーション。新装具販売・サブスクリプション・クリーニングのサービスを提供する「sinso」。『寝装具の価値を再構築する』というブランドコンセプトを空間に落とし込み、ブランドの力を増幅させる装置としての空間を目指しました。
設計の背景
かつて寝具は100年もつもので、日々の暮らしを支える道具として大切に扱われ、「打ち直し」をしながら、家族代々受け継がれるものでした。しかし現在、粗大ゴミで一番多いのは布団という調査結果もあり、東京都だけでも年間東京ドーム290個に敷き詰めることのできる分量の布団が廃棄されていると言います。
祖父の代から布団の販売を始め、寝具やリネンのリース業を行うヨネバヤシリースは、メンテナンスも行うことで、長く使える寝装具を扱うサスティナブルブランドとして「sinso」を立ち上げました。
オゾンの生成装置を導入しオゾン水で洗浄することで、使用する洗剤の量を最小限にし、環境への負担を軽減させています。さらに、sinsoの製品は洗いざらしを特徴として、環境に悪影響を及ぼさないよう糊を使用せず、 肌馴染みの良い綿本来の素材感を大切にしています。
また、工場は昔から、キツイ・キタナイ・キケンの3Kと言われており、働きたくなる工場にしたいと要望を受けました。
空間のコンセプトは、製品の特徴である「洗いざらし」に注目し、空間のコンセプトを「素」とし、最小限のデザインを心がけました。
既存の躯体や仕上げを極力使いつつ、新たに加える素材はリサイクルのしやすさを考慮して、ありふれた素材を採用。塗装を施さず、留め方はビスや隠し釘を基本として簡単に取り外せることで、リサイクルしやすくなることを考えました。
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解体後、天井を剥がすと、木軸や鉄が現れた
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改修後、木軸をそのまま隠さないデザインとして「素」を見せる
オフィスエリアは劣化していた断熱材を吹き直し、飛散防止のためポリカーボネートで塞ぎました。昼はポリカーボネートが外光を室内に拡散させ、夜は断熱材の質感が浮かび上がります。
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劣化していた断熱材を拭き直し
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上にツインカーボをビス留めにし、断熱材を意匠として見せる
一般的に工場は中で行われている事が分かりにくく、近隣住民にとってネガティブな物になってしまう事が多い。そこで、奥まで見通すことできるレイアウトとし、手前から、ラウンジ、オフィス、作業場、保管場所と異なる機能をシースルーに並べつつ、それを貫通するように電設資材を組み合わせたライン照明を吊る事で、視線を奥まで引き込むように考えました。
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工場の奥まで視線を誘導する吊り照明は、電設資材をそのまま照明器具のカバーとして利用
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既存躯体を表わし、配管はルートを整理し、そのまま見せる
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お客様やスタッフ休憩用のソファは、その場のニーズに応じて自由に組み合わせることができる。また、ダブルベッドサイズにもなり、布団を体験することも可能
審査員のコメント
担当の審査員:成瀬 友梨・浅子 佳英・丸山 優子・山梨 知彦・吉田 愛・Chee Su Eing
寝装具の販売・リース、クリーニング等のサービスを提供するブランドのクリーニング工場兼オフィスの計画。かつては手入れを繰り返し長く使われていた寝具が使い捨てのように消費され粗大ゴミとなっている現状に対し、サスティナブルな考えを持つブランドの空間作りにおいて使用材料や工法などデザインを通して布団業界に新たな価値観を提示しようという試みが随所になされている。最小限の手数でリノベションされた空間は、リユースやサスティナブルな思考を持つブランドのブランディングとして機能しそれらが完成後に同業他社や消費者に対して影響をもたらしていることが窺える。今後のデザイナーと事業者との協業の在り方としても評価された。
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改修前 現駐車場からオフィスを眺める
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改修後
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改修前 現オフィスから駐車場を眺める
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改修後
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改修前 現オフィスからワークスペースを眺める
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改修前 現ワークスペースからオフィスを眺める
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ワークスペースからオフィス