APARTMENTS MINAMIAZABUⅡ

Year: 2019

Program
集合住宅
Location
東京都港区
Project Team
企画プロデュース:
東京建物株式会社
撮影:
矢野紀行写真事務所 

Case Study

ロングライフバリューアッププロジェクト

近年、住宅については「所有」より「賃貸」の需要が高まっていると言われています。
新しいものを求め、新しい環境、身軽さを好む若年層の世代が現れ、住宅に対する思考は年々変化しています。
そういった世の中の流れに沿って賃貸住宅やマンションが次々と供給される一方、高齢化や少子化により、町の人口は減少していく。
賃貸住宅は住居者獲得競争が激化されることとなりました。

「既存の建物をより魅力的に、生活者の理想のスタイルを実現する」
KA&Aの元にも、リノベーションを行うご相談を多く頂くようになりました
名付けて、ロングライフバリューアッププロジェクトです。

ここでいうライフとは、建物の命。
その価値を長期的に高めることで、建物に長い命を吹き込みます。

長く有効に使用し続けることで、サスティナビリティを高める。建物が綺麗になることで街が呼応し、変化を生みます。リノベーションの効果は街の価値が上がるきっかけとなりうるのです。

事例)アパートメンツ南麻布Ⅱ

使用用途:集合住宅
計画地: 港区南麻布
範囲:エントランス・1Fファサード・エレベーター、駐輪場

南麻布を考える

都内屈指の高級住宅エリア、南麻布。
この場所の持つ品格や落ち着きを、どのように表現するかに気を配った。
古くは武家屋敷が建ち並び、現在は高級住宅街となった麻布にふさわしいデザインは、
奇をてらったものではなく、落ち着いた豊かさが表現されるべきと考えた。

既存建物は、ステンレスのエントランス扉、金属の内装壁、質感の少ない床のタイルなど、全体的に素っ気ない印象が目立った。
また、アプローチ正面にはサービス駐車場が見えることや、出て行く際には道路向かいの住宅が見えるなど、目線に対しての問題点があった。

  • BEFORE

  • AFTER

そこで、平面計画としては、目線の当たりとなる部分には新たに壁や意匠及び植栽を設け、ホテルのようなエントランスを目指し、素材に関しては、普遍的な天然素材(木、石)を用いることで、温かみと落ち着きのある雰囲気とした。

  • BEFORE

エントランスに大きなアート設置し、そこに住む住人の文化的な側面を表現した。
南麻布に古くからある古川の流れをイメージしたアートは、和紙を吹きつけることで、柔らかい風合いをだし、エントランスの重厚な雰囲気を和らげている。

変化する需要

また、現在駐輪場が足りていないという話も上がった。
場所柄、車を所有するよりも、自転車を複数台持つという入居者が増えてきているようだった。
昨今2段式駐輪ラックが使えない、電動アシスト付きの自転車も増えていることも、駐輪場が足りない要因のようだった。
そのため、これまで用途を持っていなかった場所に、0平米増築申請を行い駐輪場を増やした。

仕上げ材の見直し

ELVは仕上げを見直した。
マンションのELVは傷防止のために、パンチカーペットが壁に貼られていることが多い。
このマンションもそのような仕上げになっていた。
ELVはただの移動するための機械ではなく、唯一入居者が留まり、間近に素材を感じる場所と捉え直し、傷防止という機能を損なわないことと、体が触れることを考え、レザー張りとした。

  • BEFORE

  • BEFORE

照明の重心を下げる

照明は、しっとりとした印象にするために、光の重心を下げることを意識した。
ピンスポットのようなDown Lightを主に使い床に濃淡をつけ、外壁の石は下から光を当てることで目線を下げた。

  • BEFORE

  • BEFORE

建物が生まれ変わることで、元々の生活者には長く続く満足感を、そして、新しく訪れる人にはこの場所で生活を始めたいという期待感を生む。

その土地ならではの特色を生かしたデザインを入れ込み、より価値の高い建物として命を吹き込みます。